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寿命を超越した生物 2020年現在、日本人の平均寿命は女性87.45歳 男性81.41歳(厚生労働省)と言われているが、生き物の平均寿命は基本的に体の大きさに比例している。ネズミのような小さな哺乳類であれば、2年前後の寿命があるし、犬では14年、象だと70年くらいだろうか。 体の大きさだけでなく心拍数なども比例関係にあるが、それらの呪縛から超越した生き物たちがいる。最近では有名なハダカデバネズミや、コウモリ、カメなどもその一種だろう。その中にあって海の動物は特に寿命が長い。ニシオンデンザメなどは400歳以上の寿命があるということで非常に興味深いが、この話はまた別の機会にしたい。
そんな生き物の中で個人的にも興味を持ってきたのはロブスター。アメリカに留学していたときにはメイン州にロブスターを食べに出掛けて行ったり、夏にロードアイランドのケープ・コッドに旅行にいくと必ず食べていたやつだ。ロブスター食べると手がベドベトになるよね。。。 ロブスターのゲノムから学ぶ
このロブスターは、寿命がないんじゃないか!?とも言われていたが最近では100歳くらいまでは生きるんじゃないかと言われている。本論文では、そのロブスター(Homarus americanus,)のゲノムを解読し、寿命の謎に迫ったという内容である。最近話題のOxford NanoporeやDovetailを使ってゲノム配列を読み、再構築し、25,284の遺伝子っぽいのを見つけましたよ、という感じである。
以前よりIGF-1と呼ばれるインスリン様成長因子が寿命を制御しているとして線虫ではdaf-2として有名である。このIGF-1が脳内の神経発火によって制御されていることが以前報告されており、脳と寿命は切っても切り離せない。今回、ロブスターの論文から直接IGF-1との関連はないが、ロブスターの神経回路はかなり特殊な遺伝子を持っているようで、これが寿命と関係していれば今後人でも応用可能かもしれない。
また、自然免疫も炎症と老化という観点から非常に重要であるが、病原体を認識する受容体を含めて特殊なようだ。海の中でどれだけの病原体がいて、魚やロブスターが感染症で死んでいるのかは実際には不明なため自然免疫の寿命における果たす役割は不明である。人では慢性炎症など、炎症の活性化も低下するが、不要な炎症活性化による細胞や臓器の障害も問題なので、海と陸の比較も興味深い。
結果的になぜロブスターが寿命が長いのかは不明なままだが、寿命が極端に短いKilly Fishや、子供を産むと死んでしまう鮭や鮎などとの比較も「寿命」の本質を捉えるときに重要な課題になってくるだろう。 そもそもロブスターは脱皮に失敗して死ぬと言われているが、脱衣中に服が脱げなくて死ぬのはなんとなく悲しい。
参考文献
Polinski JM, Zimin AV, Clark KF, Kohn AB, Sadowski N, Timp W, Ptitsyn A, Khanna P, Romano va DY, Williams P, Greenwood SJ, Moroz LL, Walt DR, Bodnar AG. The American lobster genome reveals insights on longevity, neural, and immune adaptations. Sci A dv. 2021 Jun 23;7(26):eabe8290. doi: 10.1126/sciadv.abe8290.
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